梅雨の隙間をぬって快晴だった6月17日、法玄寺境内の松枯れを予防する為薬剤散布を行いました。
準備 | アカマツ | |
タギョウショウ | クロマツ | |
マツ枯れの原因
日本におけるマツ枯れの被害は、明治末期ごろから報告され「昆虫の寄生が確認できたものの、原因は明らかにできなかった」という記録があるそうです。
その後はマツ枯れが収まらず、ひどい場合は山全体が真っ赤に枯れたマツで覆われ、社会問題にもなっていきました。
研究が続けられ、1970年「マツノザイセンチュウ」の病原性が実証されました。
マツを枯らす原因は『マツノザイセンチュウ』という樹木の幹内部に寄生するセンチュウなのです。
マツノザイセンチュウ
マツノザイセンチュウは北アメリカで、ニセマツノザイセンチュウが突然変異で分かれたものと考えられています。
マツノザイセンチュウはメスの尾端がとがっているのが特徴です。
もともとマツ枯れは、北米の風土病でした。
しかし、120年ぐらい前に日本に持ち込まれた事で、東アジアで激しい被害が広がり、典型的な流行病となりました。
ところで、ニセマツノザイセンチュウは北半球の各地で確認され、日本の在来種でもあり1970年までは広く日本全国に分布していました。
しかし、マツノザイセンチュウに駆逐され、今では東北のみで分布が確認されているようです。
ニセマツノザイセンチュウは、自然条件下でマツへの病原性は確認されていません。
マツノザイセンチュウ侵入以前に、松林の生態系においてニセマツノザイセンチュウの果たしていた役割を究明することで、安定した生態系が取りも出せるかもしれませんね。
マツクイムシ
マツの集団枯損が「マツノザイセンチュウの感染が原因」であることが解るまで、マツ枯れは、枝・幹の樹皮下や材を食害する昆虫類によって引き起こされる病気と考えられていて、ゾウムシ類・キクイムシ類・シンクイムシ類等60種に及ぶ虫を総称して呼んでいました。
だから、「マツクイムシ」と言う虫自体が存在するわけではありません。
センチュウの媒介者
マツノザイセンチュウは自分自身では次の松へと移り住む事ができません。
ではどうするのでしょうか。
センチュウを運ぶ媒介者がカミキリムシです。
日本では、伝播するカミキリムシは3種確認されています。
カラフトヒゲナガカミキリ・ヒゲナガカミキリも媒介しますが、マツノザイセンチュウの検出率はきわめて少ない様です。
主役はマツノマダラカミキリです。
ところで、これらのカミキリムシを「マツクイムシ」と勘違いしている人も多い様です。
媒介昆虫のマツノマダラカミキリがマツの小枝をかじる(後食)時、マツノザイセンチュウがマツに寄生します。
(地面を通して、あるいは根からの侵入などは確認されていません)
侵入するとマツノザイセンチュウは、樹脂道などを破壊しながら増殖し、マツを弱らせていきます。
枯れるマツの60%ぐらいは年内に、40%ぐらいは年を越して葉が変色します。
変色が始まると、ほとんどのマツは1~2カ月で全葉を褐変させ枯れてしまいます。
マツ枯れの過程
- センチュウを体内に保持したカミキリムシが飛び立ち、健全なマツに飛来
- 針葉は食べず、若い枝の樹皮を後食
- マツヤ二に覚醒したセンチュウがマツに移動。樹幹内部に進入する
- 樹幹内部で増殖し、仮導管(水の通り道)をふさぐ (キャビテーション)
- マツは水が樹幹内部へ行き渡らなくなり、弱る
- 他のカミキリムシが枯れた又は、枯れかけて弱ったマツをめがけて産卵に来る(カイロモン)
- 媒介の時期は普通6~7月で、ふ化した幼虫は材内で越冬し、翌年の6~7月頃成虫になり飛び出る
カイロモンについては、ホルモンを交え、生き物ブログで詳しく書きたいと思っています。
- 樹幹内部でカミキリムシの幼虫が蝋になると、センチュウはそこへ押し寄せ、カミキリムシの体内に入り込む
- カミキリムシはそのまま羽化し、健全なマツの後食を繰り返し、次の被害樹木を作る
- マツノマダラカミキリは、6~8月頃弱ったマツに再び飛来し,樹皮下に産卵する
- この時に材内にいるマツノザイセンチュウ(耐性型)を多数体に付けてまだ枯れていないマツに媒介する
以上その繰り返しです。
対策
色々な方法が言われていますが、単純に、カミキリムシの飛来時に退治するのが得策です。
伝播さえしなければ被害が拡大することはありません。
樹幹注入剤の予防もありますが、幹に穴をあけるので後処理を適切に行わないと、腐朽菌の侵入を許します。
予防が一番いい方法と言えます。
実は一旦、マツ内部で増殖したセンチュウを駆除することは、ほとんど不可能だからです。
薬剤散布のタイミングは、カキキリムシが羽化する時が最も効果があります。
ではカミキリムシはいつ羽化するのでしょう?
カミキリムシが羽化する季節は地域により誤差があります。
しかしこの誤差にぴったり当てはまる物があります。
それは『アジサイの花が咲く』時です。
アジサイが咲く季節になるとカミキリムシは羽化し始めます。