- ビオトープの概念
最近「ビオトープ」と言う言葉をよく聴きますね。
ビオトープ(ドイツ語:Biotop)・バイオトープ(英語:biotope)とは、生物群集の生息空間を示す言葉です。ギリシャ語から来る造語で(bio(命) + topos(場所))が語源だそうです。
訳す場合は生物空間・生物生息空間とされていますが、私は生き物が互いに連携し、持続可能な生態系が形成された「安定した生物生息小環境」として説明しています。
ビオトープ(環境)とその中で生息する生物群集(中身)によって、生態系は構成されていますから、転じて多様な生き物が住みやすいように、環境を整えることを指すこともあります。
- 基本的な考え方
ビオトープとは規模は小さくてもその中に、多様な生き物の生存安定が図れる環境を造り上げていくことだと思います。
多様な生き物が息づく環境とは何でしょう?
それは、コンクリートで造られた池であるとか、芝だけで張り巡らされた草むらであるとか云った、人の手によって、一定の素材で作られた特殊化された環境ではありません。
多様な生き物が共同体として生息していくには
- 水があり
- 流れがあり
- 草地があり
- 朽木があり
- 石山があり
- 樹木が茂り
- 土がある
等、生き物が住み分けを可能とする環境条件が必要なのです。
計画を図る上で、如何に沢山の生き物が生活できる環境を、人為的に提供できるかが課題です。
計画エリアの中で、生物間の相互関係が維持できる、バランスが保たれた一定の小生態系の育成を目指すのです。
逆に、食物連鎖(生産者・消費者・分解者)を基調とした、安定した小さな生態系の確立を目指せば、整備された環境を好む、周辺の野生生物が立ちより、そこに住み着いていきます。
ビオトープのあり方としては、特殊な生物の誘致を目指すものではありません。
例えば、池を造ったからと言って、人の手によって蛍を導入しようとしてもなかなかうまくいきません。
蛍が生息していくにはモット色々な環境条件が必要です。餌となるモノアラガイやカワニナ、またそれの餌となる水生植物、それが息づく生存環境等すべてが整って蛍の存在を可能とするのです。
逆に「気づいてみたら、自然と蛍が棲息していた・・・」
こんな感じで、環境の育成を図っていくのがベストです。
生物間の相互関係が維持できる、バランスが保たれた一定の小生態系を、生き物の行動に任せ委ねていくのです。
計画地の立地条件を踏まえ、必要かつ十分な施設の導入を図り、自然界の摂理に符合した生態系のピラミッド(安定した食物連鎖)を目指していきましょう。
また、教育の観点からビオトープは、子供たちが生態観察の中で思いがけない発見をしたり、見つけた虫や草花を調べたり立て札を立てたりして、自然や環境への関心を高めさせていくのに役立ちます。
中にはヘビとかムカデとかアマリ気持ちのよくない生き物にも出くわすかも知れません。
しかし彼らもその環境の住人であり、重要な役割を荷っているのです。
静かに見守ってあげましょう。決して駆逐してはいけません。
生き物は互いに共生し、連携しています。決して単独では生きていけません。
餌として、他の生き物を殺して食べなければ活きていけないし、自分が死ねば他の生き物の餌になっています。
この循環が安定した生態系を造り上げているのです。
自然と直接触れ合い、驚きや感動をともなう体験を通じて学んでこそ、自然や環境を大切にする生きる知恵が身に付くと思います。